過去 – 経歴
―― Shôbiを立ち上げたきっかけを教えてください。
私は日本で生まれ育ち、日本の文化や伝統、そして日常の中にある美しさに囲まれて成長しました。生まれる前に亡くなった祖母に直接会うことはできませんでしたが、祖母は茶道の先生であり、その存在は幼い頃から私の中にありました。祖母の着物や茶道具を受け継いだことをきっかけに、日本茶文化や茶道が大切にする「おもてなし」「敬意」「心を整える時間」といった価値観に強く惹かれるようになりました。2015年、比較歴史文明学の修士課程に進学するためフランスへ渡りました。その後、パリの日本茶専門店で働き、数年間は店長も務めました。その経験を通じて、多くの人々が本物の日本茶の奥深さや多様性を知らないことに気づきました。
抹茶の人気は高まっていたものの、甘いドリンクや大量生産品として認識されることが多く、日本茶文化本来の魅力が十分に伝わっているとは言えませんでした。一方で、日本には優れた技術と情熱を持ちながらも、海外ではほとんど知られていない茶農家や職人が数多く存在していました。
その現状を目の当たりにし、日本茶の生産方法やテイスティング、淹れ方について学びを深めるとともに、日本茶アドバイザーの資格を取得し、茶道の学びも継続しました。学べば学ぶほど、日本とヨーロッパをつなぐ架け橋になりたいという想いが強くなっていきました。
そして2022年、その想いを形にするためにShôbiを設立しました。
「Shôbi」という名前には、美しさ、本物であること、そして職人技への敬意という意味を込めています。私が目指したのは単に商品を販売することではありません。お茶の背景にある物語や文化、価値観を伝えることです。ワインの産地や品種を楽しむように、日本茶の品種や産地、製法の違いを知り、その魅力を味わっていただきたいと考えています。
現在は茶農家や職人をはじめ、レストラン、小売店、高級百貨店、文化機関などと連携しながら活動しています。試飲会やワークショップ、イベント、教育コンテンツの提供を通じて、日本茶文化をより身近なものにするとともに、日本の伝統を守り続ける人々を支援しています。
海外で暮らす日本人女性であり、起業家であり、母親でもある私の歩みは決して平坦なものではありませんでした。起業当初はフランス語も十分ではなく、自信を失うこともありました。しかし、意味のある挑戦に完璧な準備は必要ないことを学びました。大切なのは最初の一歩を踏み出し、学び続け、人の役に立つ価値を生み出すことです。
私の原動力は今も変わりません。日本の茶文化と職人技を未来へつなぎ、一杯のお茶を通じて人と人との新しいつながりを生み出していくことです。
現在 – サービス内容

―― 事業内容について教えてください。
Shôbiは、高品質な日本茶と日本の伝統工芸品を専門に取り扱う企業です。2022年にフランスで設立し、本物の日本製品をヨーロッパへ届けることで、日本とヨーロッパをつなぐ架け橋となることを目指しています。また、日本文化の魅力を伝えるとともに、小規模生産者や職人の活動を支援することを使命としています。主力事業である日本茶では、日本各地の茶農家と直接連携し、品質や持続可能性、そして伝統的な技術にこだわって生産されたシングルオリジン茶を厳選しています。抹茶、煎茶、ほうじ茶、玄米茶、玉露をはじめとする多彩な日本茶を取り扱い、それぞれのお茶が持つ個性や背景を大切にしています。
また、日本茶だけでなく、茶器をはじめとする伝統工芸品もご紹介しています。これらの製品は、長年受け継がれてきた技術を持つ職人によって制作されており、ヨーロッパ市場へ届けることで、日本のものづくり文化の継承と発展にも貢献したいと考えています。
Shôbiでは、商品の販売だけでなく、教育活動にも力を入れています。試飲会やワークショップ、文化イベントの開催に加え、レストラン、小売店、高級百貨店、ホテル、文化機関とのコラボレーションも積極的に行っています。こうした活動を通じて、日本茶の生産方法や淹れ方だけでなく、その背景にある歴史や哲学についても知っていただける機会を提供しています。
お客様は日本茶を愛する個人の方々だけでなく、カフェやレストラン、専門店、高級小売店、ホテルなど幅広い業種にわたります。また、メディアやインフルエンサー、文化団体とも連携し、本物の日本茶と伝統工芸の魅力をより多くの方へ発信しています。
Shôbiの特徴は、「本物であること」「透明性」「ストーリー性」を大切にしていることです。単に商品を販売するのではなく、生産者や職人、そしてお客様をつなぐ体験を提供したいと考えています。一つひとつのお茶や工芸品には、それぞれの地域の歴史や文化、そして作り手の情熱が込められています。その価値を丁寧に伝えることが私たちの役割です。
今後は、ヨーロッパにおける日本茶文化の発信拠点としてさらなる成長を目指しています。同時に、日本の茶農家や職人の皆さまが守り続けてきた貴重な伝統を次世代へつなぎ、その価値を世界へ広げていきたいと考えています。
将来 – ビジョン
―― 今後のビジョンや課題について教えてください。
私の長期的なビジョンは、日本茶文化と伝統工芸の継承と世界への発信に貢献しながら、日本と世界をつなぐ架け橋となることです。私は、日本茶は単なる飲み物ではないと考えています。そこには長い歴史や職人技、おもてなしの精神、自然への敬意、そして今この瞬間を大切にする価値観が息づいています。しかし現在、日本の茶農家や職人の多くは、高齢化や人手不足、生産コストの上昇、国内市場の縮小といった課題に直面しています。このままでは、長い年月をかけて受け継がれてきた貴重な技術や文化が失われてしまう可能性もあります。
だからこそShôbiを通じて、日本の生産者や職人の皆さまに新たな機会を創出したいと考えています。単に商品を海外へ届けるだけでなく、教育プログラムや文化イベント、展示会、ワークショップなどを通じて、より深く日本文化を体験できる場を提供していきたいと思っています。
その実現に向けた大きな課題の一つが、本物の日本茶に対する理解を広げることです。抹茶は世界的な人気を集めていますが、日本茶には品種や産地、製法による多様な魅力があります。まだその奥深さを知らない方も多く、教育や情報発信は今後も重要な役割を担うと考えています。
また、生産者や職人、小売店、ホテル、レストラン、文化機関、そして消費者をつなぐ持続可能な国際ネットワークを構築することも重要なテーマです。Shôbiはまだ小さな企業ですが、価値観を共有できるパートナーとの出会いを大切にしながら、一つひとつ信頼関係を築いています。
今後は、日本茶の生産者や職人をはじめ、流通事業者、小売店、高級百貨店、ホテル、レストラン、文化団体、教育機関、メディア関係者の方々と積極的に交流していきたいと考えています。特に、品質や職人技、文化交流を大切にしながら、ビジネスを通じて社会的・文化的な価値を生み出したいと考える方々との協業に大きな可能性を感じています。
さらに、起業家や投資家、メンター、国際的なパートナーとの出会いも求めています。Shôbiの成長を支え、ヨーロッパをはじめ世界各地で教育・文化活動を拡大していくためには、多様な知見やネットワークが欠かせません。それぞれの強みを持ち寄ることで、日本の生産者にも海外の消費者にも価値のあるプロジェクトを生み出せると信じています。
最終的な目標は、単に事業を成長させることではありません。日本の文化遺産や職人技の継承に貢献し、その価値を次世代へつないでいくことです。そして、一杯のお茶を通じて人と人との新たなつながりを生み出し、国や文化を越えた理解と交流を広げていきたいと考えています。



山中 尚美さんのプロフィール
山中尚美は、日本茶と日本の伝統工芸の魅力をヨーロッパへ発信する企業「Shôbi」の創業者であり、日本人起業家である。
日本で生まれ育ち、2015年に比較歴史文明学の修士課程への進学を機にフランスへ渡る。パリの日本茶専門店での勤務や店長職を含め、6年以上にわたり日本茶業界に従事。日本茶文化やテイスティング、教育分野において豊富な知識と経験を培ってきた。
文化交流への強い情熱を原動力に、2022年にShôbiを設立。日本の茶農家や職人と海外の消費者をつなぐ架け橋となることを目指し、日本茶の試飲会やワークショップ、イベントの企画運営、企業や文化機関とのコラボレーションを展開している。
また、日本の伝統技術や文化の継承に貢献するとともに、日本茶文化をより身近なものとして世界へ広める活動に取り組んでいる。
海外で暮らす日本人女性であり、起業家であり、母親でもある立場から、自らの挑戦を通じて、人々が情熱を追求し、文化を超えた新たなつながりを生み出すきっかけを創出することを目指している。
Shôbi 創業者 兼 CEO
国籍 : 日本人
出身 : 埼玉県
居住地 : La Rochelle, France
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