仕事への考え方
——ご自身の経験から、お仕事で重視していることは何ですか?
私がビジネスやマーケティングのプロジェクトで最も重視しているのは、「ターゲットとなるオーディエンスを深く理解し、そのニーズに沿った形で成果を導くこと」です。そのプロセスを通じて、誰にとっても使いやすく、分かりやすいデザインの重要性に気づかされました。こうしたデザインとは、例えば複数の方法で情報にアクセスできたり、ビジュアルや言葉づかいに多様性が反映されていたりするものです。私自身、日本で外国人として生活する中で、「これは誰にとっても使いやすいように工夫されている」と感じる場面もあれば、「もう少し配慮があればいいのに」と思うこともありました。
ただ、このような考え方は、障害のある方や外国人だけのためではありません。人生の中で誰もが一度は「自分だけが対象外だった」と感じる経験をしたことがあるのではないでしょうか。だからこそ、すべての人にとって役立つ視点だと思っています。そして、そうした「取り残される瞬間」をなくしていくために、ビジネスやデザインの力が大きく貢献できると信じています。
現在 – 活動内容
——多様な人に配慮したデザインに関心を持ったきっかけは何ですか?
多様な人に配慮したものづくりというと、身体的な特徴や性別、収入、読み書きの能力などが注目されがちです。実際に、企業が活用できるデータもあるため、そういった視点での取り組みは少しずつ進んでいると思います。
ただ、自分の人生を振り返って「受け入れられていない」と感じた場面を探ってみると、そうしたデータでは拾えない経験がたくさんありました。情報がなければ、企業がその存在に気づけないのも当然ですし、その結果として、誰もが心地よく感じられる商品や体験の実現が難しくなることもあると感じました。
——その気づきから始めた取り組みについて教えてください。
「The Curious Nail(ザ・キュリアス・ネイル)」というプロジェクトを立ち上げました。本とポッドキャストの2つの軸で展開しています。
本では「受け入れられやすさの特性(Inclusion Identity Framework)」という考え方を紹介し、自分が日本で経験した実例をもとに、より深く人を理解する方法を伝えています。
ポッドキャストでは他の人の視点から、「受け入れられる瞬間」や「取り残される瞬間」について語ってもらっています。番組は英語ですが、英語・スペイン語・日本語の文字起こしをウェブサイトで公開しています。
将来 – ビジョン
——「The Curious Nail」を通して、どのようなことを伝えたいと考えていますか?
「The Curious Nail」では、さまざまな人の実体験を共有することで、今のビジネスやデザインの世界にまだ存在していない「気づき」や「視点」を、あえて可視化したいと思っています。こうしたストーリーを通じて、「誰かの立場に立って考えること」の大切さが広がっていくことを願っています。
将来的には、すべてのプロフェッショナルなデザインやビジネスのプロジェクトに、多様な人に配慮する視点が自然に組み込まれるようになってほしいと思います。そうすることで、プロダクトとしての質も高まり、社会全体がよりやさしくなると信じています。
まずは、自分自身を理解することが第一歩です。過去に自分が「受け入れてもらえなかった」と感じた経験を振り返ることで、他の人の視点も見えてくるようになります。
もしどこから始めればいいかわからない方には、本の最後の章を読んでいただきたいです。自分自身に問いかけるための質問や、自分の体験から「誰かを思いやる姿勢」を育てるヒントを紹介しています。
今後は、日本語版の書籍や、日本語のオーディオブックも制作し、より多くの方に届けられるようにしたいと考えています。
——ビジネスを成功させるために、どんな人とつながりたいと考えていますか?著書では、人を深く理解するためのフレームワークを紹介していますが、私にとってより価値があると感じているのはポッドキャストの方です。「The Curious Nail Podcast」を通じて、多くの方の体験を共有することで、私たちが見落としがちな視点や、さまざまな背景を持つ人の存在が浮かび上がってきます。
これまでの人生で「どこかで仲間外れにされたような気持ちになったことがある方」、そして「その体験を誰かに伝えたいと思っている方」とつながっていきたいです。その一つひとつの声が、社会のあり方を少しずつ変える力になると信じています。
また、私はプロフェッショナルとして、企業が自社のターゲットとなる人たちをより深く理解し、そのニーズに合った体験やサービスをつくるお手伝いをしています。私のフレームワークがビジネスにどのように応用できるかに関心のある企業とも、ぜひご一緒したいです。
一人ひとりの視点や声を尊重しながら、よりよい世界を一緒につくっていけたらと願っています。

Jenessa Carderさんのプロフィール
ジェネッサ・カーターさん(Jenessa Carder) は、Relativに所属する国際的なカスタマーエクスペリエンス・ストラテジスト - 顧客体験(CX)戦略担当者であり、受賞歴を持つビジネス変革のリーダー。これまでに、グローバルエージェンシー、消費財、エンターテインメント、デジタルイノベーションの分野を横断しながら、デザイン思考と行動科学を融合させた手法で成果を上げてきた。
元大学教授およびアートディレクターとしての経験を持ち、現在はアメリカと日本の両国で、企業や組織に対して「人を中心に据えた戦略」や「アクセシブルなサービス設計」の構築を支援している。業界カンファレンスでの講演や、ビジネス系メディアへの寄稿も多数行っている。
初の単著 The Curious Nail Who Stuck Out では、多様性への配慮、イノベーション、日本文化に関する独自の視点を展開。個人の経験をベースに、現代のビジネスと社会に求められる「他者理解」の在り方を提案している。
プライベートでは、日本の着物や染織技術の研究をライフワークとし、スキー、ダンス、旅を楽しむ。
また、プロフェッショナル活動では「Express Anything(すべてを表現する)」という名でも知られており、「好奇心を通じて、人はどんなことでも表現できる」という信念のもと、言葉やデザインを通じて多様な価値を伝えている。
アメリカ国籍 Dallas, Texas, USA 出身
大学 : Savannah College of Art & Design (Savannah, Georgia, USA)
大学院 : Emerson College (Bosotn, Massachusetts, USA)
▼ 会社ウェブサイト
https://relativ.com/
▼ 書籍 (link will redirect)
https://thecuriousnail.com/
▼ Podcast
https://open.spotify.com/show/5cbIJoMAs2cpQ3EELAy4Td?si=7450e90dbb3342c6
▼ LinkedIn
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